公開日 2013年03月11日
1,情報化社会を迎えて
今日の社会では、急速に発達しているコンピュータや情報通信技術によって、個人と世界を繋ぐネットワーク化が進み、これまでの価値を図る尺度であった「物」に対して、「情報」の価値が重要となる中で、産業経済等の分野において時間、空間、国境を超えた新たな秩序づくりが進行しています。
また、個人の生活においても、情報化を利用した新たなビジネスやサービスが生まれたことにより、テレビ、ラジオ等から流れる様々な情報を受け取るだけではなく、自らコンピュータを活用するなどして情報を検索できる、あるいは、家庭に居ながらにして物資を購入その他の利便性を享受できるようになるなど、急速に市民の価値観やライフスタイルの変化が進行しています。
情報化の進展が経済・産業及び生活の両分野にもたらしている変化は、単に社会が部分的に「情報化」され「利便性」が増したというのではなく、高度な情報基盤を前提とした新たな社会の再構築が求められる時代であると言えます。
このような中で、高度情報化社会に対応出来うる行政の情報化を進めるため、国(政府)は、平成6年12月に「行政情報化推進基本計画」を閣議決定し、平成7年度から平成11年度までの5年間を計画年度として次の3項目を目標に行政の情報化を進めています。
- 情報通信技術の成果を行政のあらゆる分野に導入する
- 情報システムの利用を行政の組織活動に不可欠なものとして定着する
- 「紙」による情報の処理から通信ネットワークによる電子化された情報処理に移行する
つまり、情報技術を「あらゆる分野に」「組織活動へ」「ペーパーレス化」ということです。
この情報化の推進はきわめて迅速に進められており、計画初年度の平成7年当初では、LAN(ローカルエリアネットワーク)が整備されていたのは、25本省庁の内9省庁でしたが、7年度末には、LANの整備が22省庁で行われ、パソコンの整備についても、7年度末整備台数27,740台の内69%にあたる19,151台が7年度中に整備されました。
平成8年度においても過去最高の9,554億円(対前年比15.8%増)の予算を確保し、情報通信基盤整備を急速に進展させており、平成9年1月には、霞ヶ関WAN(ワイドエリアネットワーク)による省庁間ネットワークの運用を始
めています。
また平成8年度から自治省は、都道府県に対しても、庁内LAN整備の財政支援を始め、LANのネットワーク敷設費やパソコン等の端末を起債及び特別交付税にて措置し、行政の情報ネットワーク化を求めています。
平成9年度以降については、市町村に対しても都道府県と同様にLAN整備の財政支援を予定しています。
2、「OA化」から「情報化」へ
本市においては、給与や税務等の大量・定型・反復的な事務を効率的に処理するため、昭和44年からホストコンピュータを導入し、内部事務の効率化を中心とした「OA化」を進めてきました。
しかし、住民票や印鑑証明の発行・登録など窓口サービスの向上を目指して平成7年導入した住民記録システムは、単なる「行政事務の効率化」を目的とした「OA化」の流れから、「地域の住民ニーズ」へ応える、あるいは地域の振興施策に情報通信技術を活用するための情報通信基盤の整備を進めるという「地域情報化」への転機となるものでした。
地域間の情報格差を是正し、住民があまねく情報化の恩恵に浴することのできる地域情報化を進めるためには、それぞれの地域の課題と発展の方向に立って、高度情報化社会に対応した情報通信システムの構築や情報通信基盤の整備を推進するとともに、行政と民間の適切な役割分担のもと、地域産業の情報化促進と情報関連産業の振興、地域情報化推進体制の構築、情報化を担う人づくり等に取り組む必要があります。
本指針は、地域情報化の推進にとって根幹的な分野となる行政の情報化と高度情報化社会に適応した行政運営の実現を目指し策定するものです。
3、情報化の目標
「行政の情報化」を進めるにあたっては、
地域情報化の流れから、従来からの事務処理の効率化を目標とした「OA化」に止まることなく、住民の視点に立った行政サービスの質的向上と情報ニーズヘの的確な対応を目指し、以下の目標を設定します。
- 行政サービスの地理的・時間的格差の解消
- 事務手続きの簡素化と窓口業務のネットワーク化
- 総合窓口の設置
- 各種証明書の交付事務の自動化
- 行政情報、保健医療情報、福祉活動支援情報、防災情報、生涯学習支援情報、図書館情報、公共施設案内予約など情報システムの構築
- 市民活動を支援する情報や地域イベント情報システムの構築
- 産業情報、観光物産情報、中小企業技術開発支援情報、商店街情報など地域に関わる様々な情報を集約し、活用できる環境の整備(システム化)
また、今後の地方分権や規制緩和に伴う地域の特性を生かしたまちづくりに、より一層の市民の参画を得るためには、行政と市民の情報の流れを豊かにする方法として、情報提供に情報通信技術を用いるだけではなく、広く意見や提言を受ける機能としてその活用に努めます。
4、実現に向けて
目標達成のためには、給与や人事、税務、予算等の内部の管理業務ばかりではなく市民生活や保健・医療、福祉、教育文化等あらゆる分野に情報処理技術を活用することが必要です。
従来からの電算所管部門の集中処理システムによる情報処理体制を見直し、新しい情報通信技術を生かした情報処理体制の再構築を目指します。
(1)庁内LANとCSSの構築
市民の価値観の多様化や行政ニーズの増大は、行政に少量・多種・非定型的な業務の拡大をもたらしています。
これらを、現在の集中処理システムを用いて対応するには、より大型のホストコンピュータを必要とする等コストの増大が避けられません.
また、これまでのホストコンビュータを介するオンラインシステムだけでは、利用部門(クライアント)同士の情報の共有(情報交換や相互利用)にも困難性があります。
最近は、情報機器の処理能力が著しく向上し、小型化や低価格化ともあいまって、パソコンなどの小型コンピュータ同士をネットワーク化し、CSS(分散処理システム)を構築することによって、従来のホストコンピュータによる集中処理システムに比較して、機能的にも経済的にも十分対抗できる環境が整ってきました。
今後増大が見込まれる行政事務の情報処理にあたっては、コストの抑制や部門間の情報共有を促進するため、ネットワークを用いたCSS(分散処理システム)を導入し、行政事務の迅速化と柔軟佐、効率的な行政運営を図ります。
※ LAN(ローカルエリアネットワークの略でランと読む)とは
市役所庁舎内のような比較的狭い地域に分散するパソコンや各種情報処理機器を総合的に結びつける情報ネットワークのこと。
※CSS(クライアントサーバシステム)とは
クライアント(担当職員が使用するパソコン)がサーバ(データベースを保有する機器)から必要なデータを取りだし、活用することを目的とした分散処理システムのこと。
(2)ホストコンピュータとパソコンの併用
行政の情報化を進めるにあたっては、個人情報の保護と行政データの保守・安全性の確保が基本です。
また、住民情報データや税情報等膨大な情報の迅速な処理が求められています。
そのためには、パソコンLANによる分散処理システムの導入に加えホストコンピュータによる集中処理システムの活用も必要です。
今後の情報通信技術の動向に留意しながら、当面、登別市では、ホストコンピュータを用いて既存の住民情報データや税情報の処理を行い、パソコンでは新規のシステム開発や給与システムなどの老朽化した既存システムの更新、個人単位の行政事務の処理を行うなど、情報処理の内容に応じた適切なコンピュータシステムの活用を図ります。
(3)システム構築の方法(EUCの実践)
これまでのホストコンピュータによるシステム開発は、情報主管部門(行政管理課)においてプログラム作成、オペレーション業務、データ管理、予算要求、契約事務などを行ってきました。
情報化社会における行政ニーズは、質的にも量的にも絶えず変化するとともに、全く新しいニーズの発生が予想され、これらにきめ細かく対応するためにはシステムのエンドユーザーである担当課が住民に最も身近な立場で主体的に情報処理を行うことが重要です。
LAN構集後のCSSにおいては、業務システムの企画から構築までをそれぞれの担当課が行うこととします。
情報主管部門(行政管理課)では、市役所全体の情報化を推進するため、業務システムに係る総合調整を行います。
※EUC(エンドユーザーコンピューティング)とは
システムの利用者(エンドユーザー)が、自分自身で必要とする情報処理システムを構築することの意味
5、行政情報化の基盤整備
ネットワークを用いたCSSによるEUCを確立するため、行政の情報化に対応できる人材の育成、パソコンなどの機器の導入、ネットワークの確立等情報基盤の整備を進めます。
(1)職員研修について
行政の情報化に対応できる職員の養成を行うため、パソコン操作の習得はもとより、情報の分析・加工、付加価値化などいわゆる情報リテラシーの向上を図る研修を計画的に実施します。
簡単な表計算やワ一プロソフトの操作などの初級段階においては、市役所内で育成した講師による職場内研修を実施し、更に高度な情報の利用技術など中級の段階の職員には、外部講師を招くなど、研修メニューの充実に努めます。
また、ソフトウェア開発などに際して、外部の専門会社との共同作業を行うに必要な基礎的知識や情報モラル向上のための研修も併せて実施します。
(2)情報処理機器の整備
職員研修をより効果的に進めるため、計画的にパソコン等の情報処理機器の導入をします。
また、情報の標準化を図り、行政情報の集積、流通を容易にするため、現在のホストコンピュータをネットワーク対応機種へ更新するとともに、パソコン等で使用するアプリケーションソフトの統一化を図ります。
ネットワークの構築時期については、ネットワークを利用する職員全体に、機器の操作や情報を扱う一定の能力を必要とすることから、人材育成の進捗状況に応じて、構築時期を検討するとともに、構築の手法や利用方法については、情報通信技術の進展を考慮しながら、横断的なワーキンググループを設置し、継続的に検討を行います。
(3)個人情報保護
登別市においては、データ保護の的確な管理を目的に「登別市電子計算業務にかかるデータ保護及び管理に関する規程」(昭和62年4月1日)を定め、電子計算機及び端末機等を使用して事務を処理する部門に対し、情報管理を義務づけています。
しかしながら、今後は全ての職員が情報処理に関係するため、これに対応した規程の整備を行います。
(4)労働安全対策
VDT(ディスプレイ端末)作業に伴う身体的、精神的負担が労働衛生上の問題として、労働省は昭和60年に「VDT作業のための労働衛生上の指針」を定めました。
具体的には、目の疲労、視力低下、肩こり、腰痛、ストレスなどの症状を訴える事例が多く報告されており、指針に基づく適切な運用に努めます。