公開日 2013年02月25日
平成二十一年第一回登別市議会定例会にあたり、新年度の市政執行に臨む基本的な考え方と施策の重点について申し上げます。
昨年八月の登別市長選挙において、登別市制施行後、初めての民間出身の市長として就任をさせていただき、早六カ月が過ぎようとしております。
この間、高額療養費の未請求事務や厚生年金病院の存続活動、低迷を続ける地域経済への対応など、さまざまな問題や課題を抱え、今、改めてその責任の重さを再認識し、決意を新たにスピード感を持って市政に取り組んでまいりたいと考えております。
先ず、市政を取り巻く諸情勢についてであります。
米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融資本市場の混乱による世界的な景気の悪化は、未だ底が見えず、下降局面が長期化・深刻化することが懸念され、国民生活にも深刻な影響を与えております。
世界的な金融不安による世界同時不況に突入し、円高が急速に進んだことにより、輸出依存度の高い自動車や電機などの製造業は不振に陥り、派遣労働者の派遣切りや雇い止めに象徴される雇用の不安が個人消費を抑制し、小売業界からは「一億総節約時代に突入」との悲鳴が上がっておりますことからも、日本が外需依存型の経済構造であることが改めて証明されました。
先般、内閣府が発表した二〇〇八年十月から十二月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質前期比三・三パーセント減、年率換算でマイナス十二・七パーセントと急激な落ち込みを記録しました。
これまで大都市圏と比べ格差があると言われていた道内経済は、より一層厳しい状況にあります。
とりわけ、雇用不安は深刻となっており、将来を担う新卒者の内定取り消しが行われ、雇用情勢は冬の時代を迎えるという厳しい状況となってきています。
本市の基幹産業である観光においては、これまで外国人観光客の入込みが順調に増加してきたところではありますが、円高により昨年秋口から減少に転じており、個人消費の低迷と相まって観光産業及び関連産業への影響、ひいては税収の減少につながるものと強く懸念するものであります。
次に、厚生年金病院の存続問題でありますが、昨年十月に厚生年金病院が国から独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に出資・移管されたことに伴い、西胆振六市町と白老町の連名により厚生労働大臣及び道内選出の国会議員等に対して、登別厚生年金病院の将来構想を添えて存続要望を行うとともに、北海道に対してもその支援と協力をお願いしてまいりました。
その後、政府・与党は厚生年金病院と社会保険病院に関し、地域医療の担い手としての役割は重要であるとのことから、一転して存続させる方向で検討に入った旨の報道がなされました。
登別厚生年金病院は、本市唯一の公的病院として、市民はもとより、近隣市町からも多くの患者を受け入れております。
また、登別温泉は、道内外や海外から年間三百三十万人の観光客が訪れる北海道を代表する観光地でありますので、観光客が安心して滞在できる環境を保持するためにも、登別厚生年金病院の存続は必要不可欠なものであると考えております。
次に、高額療養費の未請求問題でありますが、議会においては、特別委員会を設置し、原因究明、再発防止等について長期間にわたり慎重に審議され、報告書としてまとめられたことに対し、深く敬意を表するものであります。
市としては、先般、関係職員に対する懲戒処分を行いました。
これにより、職員一人ひとりが与えられた職責を全うするという意識を改めて認識したものと考えております。
また、損失処理については、市民からの信頼を回復するために職員が一致団結して取り組む姿勢が大切でありますので、職員の協力のもとに対応してまいりたいと考えております。
また、再発防止については、「医療費助成事業に係る高額療養費請求事務等に関する調査特別委員会」の提言、「医療費助成事業に係る高額療養費の一部不適切な事務に関する再発防止検討委員会」の提言を踏まえ、年度内に再発防止策を取りまとめることとしております。
本年度は、未請求問題で失った市民からの信頼の回復に向け、「信頼される市役所づくりへの新生元年」として位置付け、その第一歩を踏み出したいと考えております。
このため、職員意識の向上を図るための職員研修の抜本的な見直しや事務改善の促進に努めるとともに組織機構のあり方を検討してまいります。
以下、本年度の市政執行に臨む基本的な考えを申し上げます。
先ず第一は、市民力の結集による開かれた行政運営であります。
市民との協働のまちづくりを推進するためには、まちづくりに対して多くの市民が関心を持ち、参画をすることが基本であります。
市民一人ひとりが持っている知識や経験、能力を活用し、人と人とのつながりによるネットワークが大きな「市民力」へとなります。
また、「市民力」は、市民一人ひとりの温かい心であり、使命感であり、熱意であり、魅力であり、郷土愛でもあります。
「市民力」は、こうした市民一人ひとりが持っている力であり、このまちを発展に導く市民の「力」であります。
この市民力を結集し、多くの市民が自発的にまちづくりに参画することによって、初めて「市民が主役のまちづくり」が始まります。
その第一歩を踏み出すためには、市政情報をタイムリーに丁寧にわかりやすく情報発信をするとともに、市民の皆さんの声を直接聞く姿勢と多くの市民の声を聞くことのできる場の設定が何よりも肝要であると考えております。
そのためには、市の広報紙やホームページを見直し、その充実を図るとともに、マスコミ等を活用して市民の皆さんにタイムリーに旬な市政情報を伝えてまいりたいと考えております。
また、市民の皆さんとの距離感をゼロに近づけ、市政を身近なものとするために、従来の地区懇談会とは別に、自ら地域に赴き、市民や各種団体の皆さんとまちづくりやまちおこしについて、直接膝を交えて話し合いができる懇談会を開催し、市政に対する市民一人ひとりの声や各種団体の声を市政に反映するよう取り組んでまいりたいと考えております。
こうした市民や団体の声を市政に反映させるために、これを受け止め、具現化する市職員の意識改革や組織体制の充実・強化が必要でありますので、市職員との対話を十分に行い、これまで以上に市民の声を反映することのできる対応能力の向上を図ることに努めるとともに、市民とのまちづくりに関する政策形成の体制を強化するため、「政策推進室」を設置します。
第二は、産業連携による地域経済の活性化についてであります。
本市は、温泉資源をはじめとする多様な観光資源に恵まれるとともに、先達の弛まぬ努力により、日本有数の観光地として発展をしてきました。
近年は、長引く国内景気の低迷により国内観光客が減少傾向にあり、増加傾向にあった外国人観光客についても昨年秋口からの円高による影響が強く懸念されます。
基幹産業である観光産業の冷え込みは、市内経済にも大きな影響を与えるとともに、税収にも影響を与え、厳しい財政状況からの脱却がさらに難しくなることが想定されます。
基幹産業である観光産業が元気を取り戻すことにより、市内経済の活性化が図られると考えますことから、市民の皆さんとともに知恵を出し合い、まちをあげての全市観光地づくり、いつまでも光を放ち続けられる観光地づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
そのためには、新たな観光客の誘客やリピーターを増やすための観光戦略づくりに取り組むとともに市内に埋もれている観光資源の掘り起こしとその活用の方策を探り、各地域がそれぞれの特色を活かして連携し、新たな産業へと繋がる潜在的な力「地域力」を掘り起こし地域の活性化に取り組んでまいりたいと考えております。
また、観光産業を軸とした「産業クラスター形成計画」を推進することにより、新たな起業を誘導するとともに、雇用の場が創出されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
さらに、長年、本市の大きな観光資源である「登別温泉」というビッグブランドに続く、新たな登別ブランドづくりについて経済関係団体や多くの市民のご協力をいただきながら取り組みを進めるとともに、東京登別げんきかいや札幌のぼりべつ会のご協力を得ながら、その販路の拡大を推進し、地域経済の活性化に向けて取り組んでまいります。
第三は、市民の暮らしを大切にしたまちづくりについてであります。
少子高齢化や核家族化の進行などにより、地域における隣近所との付き合いが希薄化しております。
このような時代にこそ、人々が手と手を取り合い、思いやりを持って支え合う「福祉の心」が重要となってきています。
高齢者は、長年の人生の中で培ってきた知恵や経験を子どもたちや若い人たちへ伝え、子どもたちや若い人たちは、高齢者を敬い支えあう「思いやりの心」を持って接し、誰もが住み慣れたまちでこのまちに生まれて本当に良かったと思い、生きがいをもって暮らし、安全・安心な生活をおくることができる地域社会の実現が求められています。
そのためには、子育て世代が安心して子どもを生み育てられる環境、高齢者や障がい者を地域で支える仕組みづくり、さらには市民や団体、事業者、行政が各々の役割分担をしながら参加する地域福祉の推進体制の充実に取り組んでまいります。
また、「自らの健康は自ら守る」という健康の自己管理意識を高めるとともに、市民が自ら取り組む健康づくりへの支援を行ってまいります。
次に、平成二十一年度の重点施策について申し上げます。
第一に、財政の健全化についてであります。
本市の財政状況は、『三位一体の改革』などによる臨時財政対策債を含めた実質的な地方交付税の削減と景気低迷や生産人口の減少による市税収入の伸び悩みに加え、ごみ処理施設建設事業をはじめとする大型事業の影響などによりピークを迎えた公債費が高止まりの状況が続くなど、大変厳しい状況にあります。
平成十九年八月に作成した『中期財政見通し』では、平成十九年度から平成二十二年度までの収支不足額が二十八億二千万円に上ると試算したところであり、この収支不足額の解消を図るため、財政健全化に向けた取り組みを進めているところであります。
今後においても、さらなる行政経費の縮減や事務事業の見直し、歳入の安定確保に努めるとともに、大型建設事業をできるだけ抑制しながら公共施設の延命化やランニングコストの効率化を図るなど、財政の健全化に向けて行財政改革に努めてまいります。
組織機構については、医療費助成事業にかかる一部不適切な事務について重く受け止め、市民のみなさんの信頼を再び得ることができ、職員一人ひとりが自らの業務に自信と誇りを持ち、その役割を果たすことができるよう機能的な組織体制の見直しを図ってまいります。
また、登別市まちづくり基本条例に基づき、市民との協働のまちづくりについての情報収集、調査研究、まちづくりに関する相談や支援など、迅速な意思決定のもと、市民参画による市政運営を推進するため、「政策推進室」を設置します。
職員研修については、その内容を見直し、充実に努めるとともに、職員の公務員倫理の意識の高揚を図り、職員一人ひとりが使命感と目的意識を持ってまちづくりに取り組むように努めてまいります。
本年度は、職場内研修(OJT)を重点的に実施し、職場内の意思疎通の充実を図ってまいります。
行政経費の縮減については、職員の理解と協力を得ながら給与の独自削減を継続して実施するとともに、事務事業の民間委託、指定管理者の活用など、事務事業の見直しに引き続き取り組んでまいります。
また、平成十二年度から行っております事務事業評価に加え、各種団体や専門家などの協力を得ながら、行政と民間の役割分担などについて仕分ける「事業仕分け制度」を外部評価として試行してまいります。
西いぶり広域連合における共同電算事業は、その基本である住民基本台帳、税の賦課、財務会計システムなど、概ね順調にスタートできました。
今後は、制度改正や定額給付金給付事業など新たな事務にも適切に対応し、経費の負担軽減に努めてまいります。
厳しい財政状況のもとでは、削減ありきになりがちです。
しかし、このときこそまちづくりに向けた種を植え、芽を育てることが必要です。
市民の目線に立ってこれまでの事業を補完するほか、新たな事業に取り組むため、「明日のまちづくり特別枠」として、各部局がそれぞれ検討を重ねて政策としてまとめ、予算計上いたしました。
第二に、地域経済の活性化についてであります。
西胆振の経済状況は、一部エネルギー関連などの設備投資の増強が行われているものの、自動車産業の生産縮小に伴う鉄鋼の生産調整や、国や北海道などの公共投資の減少に加え、人口の減少、高齢化の進行などにより、首都圏や札幌圏との格差が顕在化しております。
本市においても、国内外の景気後退の本格化に伴い、基幹産業である観光においては、昨年秋口以降、宿泊者等が減少傾向にあるほか、建設業、小売業など多くの業種が厳しい状況にあります。
地域経済の活性化については、「産業クラスター形成計画」の取り組みを促進し、観光と他産業との交流や連携をさらに深めるためのネットワーク化に取り組んでまいります。
また、新しい登別観光の創造に資する人材の確保と育成を通じ、市民の雇用機会の創出や起業化を図るため、健康保養ガイドやケアツーリズム・アテンダント、地域観光マネージャーなどを養成する国の「地域雇用創造推進事業」を引き続き活用し、雇用の確保に努めてまいります。
国の平成二十年度第二次補正予算において、地域の活性化を積極的に図ることを目的とした「地域活性化・生活対策臨時交付金」が盛り込まれたことから、市内企業の受注に配慮した事業を交付金に市債を上乗せて実施し、市内経済の活性化を図ってまいります。
その取り組みとして、市民によるまちづくりへの参画の高まりを促進するため、市民活動を展開するための拠点である「(仮称)市民活動センター」を整備するほか、児童館の新設、老人福祉センターなどの公共施設の改修整備を行ってまいります。
このほか、国の第2次補正予算において盛り込まれた「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」等を活用し、新たな雇用の場の創出に努めてまいります。
また、市独自の取り組みとして、就職の意欲を持ちながら就職が困難である新規卒業者等を対象に市の臨時職員として採用し、雇用の場の確保に努めてまいります。
地域ブランドづくりについては、市内の景観や自然、歴史、風土、文化、素材、人材などの地域資源を十分に活用した新たな商品や製品の開発支援を行うとともに、情報発信の手法に意匠を凝らし、安全・安心を基本に据えた商品の価値や認知度を高めるための推奨制度を設け、「のぼりべつブランド」の確立に努めてまいります。
観光については、国内外の観光客誘致活動を行う登別観光協会をはじめ、登別市・白老町観光連絡協議会や西いぶり戦略的観光推進協議会の活動を支援してまいります。
また、昨年完成した温泉バイパスや泉源公園、天然足湯などを活用しながら、新たな観光資源の発掘に努めるとともに、それぞれの特色を生かしながら周辺自治体と連携を図り、魅力ある観光地づくりに取り組んでまいります。
カルルス温泉サンライバスキー場については、冬季の観光振興、ウインタースポーツの振興及びカルルス地区の活性化を図るため、引き続き安定運営に努めてまいります。
農業については、ゆとりある酪農や畜産経営の安定化に向け、引き続き酪農ヘルパー事業や市牧場の開設による集約的な放牧利用の促進を進めるとともに、付加価値の高い農畜産物加工への取り組みを推進してまいります。
また、農業と観光との連携を進める取り組みとして、農畜産物加工や農作業体験などの活動を通し、都市住民と農村地域の住民との交流を行うグリーンツーリズム活動の推進が図られるよう関係者との協議を進めてまいります。
林業については、森林のもつ水源の涵養機能のほか、二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を防止する重要な役割を担うことから、民有林の造林や間伐などの保育、育林を促進します。
水産業については、「つくり育てる漁業」の推進に向け、いぶり中央漁業協同組合や白老町と連携し、漁業専門員の配置を継続するとともに、えりも以西栽培漁業振興推進協議会によるマツカワ(王蝶)の放流事業を推進してまいります。
また、漁業者が安全・安心に操業ができる環境づくりやふれあい機能のある漁港整備を促進するとともに、水産業と観光産業の連携を強め、地場水産物の直売等による地産地消の拡大など、「登別・白老(虎杖浜)地域マリンビジョン」の推進を図ります。
第三に、ぬくもりのあるまちづくりについてであります。
住み慣れたふるさと「のぼりべつ」で、誰もが活き活きと健康に日常生活を営み、人と人とのふれあいの中にぬくもりを感じることができる地域社会を実現するため、行政はもちろん、市民一人ひとりが互いに支え合うまちづくりに取り組む必要があります。
地域医療については、西胆振医療圏においても医師の不足は大きな問題となっており、総合病院の診療機能が低下し、救急医療等に大きな影響を与えております。
中でも、病院勤務の小児科医が不足し、小児救急に対応できない状況もでてきており、これまでと同様の診療体制を維持することが困難となっております。
救急医療体制の確保に向け、関係機関と連携を取りながら地域の医療体制の確保に努めてまいります。
また、当地域における看護師不足に対応するため、市立室蘭看護専門学院が移転改築され、この中で定員を拡大することとなっていることから、この拡大分の一部について整備費とその後の運営費について負担することとします。
登別厚生年金病院については、救急医療の一翼を担うなど、地域医療にとって重要な病院であることから、国の動向を踏まえ近隣市町の協力を得ながら、今後とも存続活動を進めてまいります。
子育て支援については、進行する少子化に対応するため、「次世代育成支援対策推進法」に基づき、「登別市次世代育成支援行動計画」の前期計画を策定し、安心して子どもを産み、健やかに育てる環境づくりに努めてまいりました。
更なる取り組みの充実・推進を図るため、平成二十二年度から平成二十六年度までの後期計画の策定に取り組んでまいります。
若い世代が安心して子どもを産み育てられる環境整備を進めるため、引き続き、子育て支援センターにおいて、子育て相談や子育て世代・子育て親子のふれあい交流の場を提供するとともに、零歳から三歳児を対象とした絵本の読み聞かせなどに取り組みます。
また、就労などにより昼間保護者のいない家庭の児童が、放課後や夏休み、冬休みなど、安心して過ごせる場として、本年度は青葉小学校区に児童館を新設し、年内の開設を目指すとともに、引き続き放課後児童クラブと児童館の運営の充実に努めてまいります。
保育所運営については、登別保育所を学校法人に委託し、幼保一元化事業を推進してきました。
本年度は、「認定こども園」の認定を目指し、同保育所に併設している「登別子育て支援センター」の運営を学校法人に委託することとします。
子ども達の社会性等を養うため、複数の小学校の年齢の異なる児童が放課後、親元から離れ、生活体験や自然体験をしながら学校へ通う「通学合宿事業 みんなで学ぶ『子ども村』」をふぉれすと鉱山で実施します。
子育て世代と子どもの食生活の改善を図るため、家庭で料理することができるレシピの実演や試食、講座、相談などを行う「家族DE食育 健康のぼりべつ」に取り組んでまいります。
妊婦の健康管理の充実及び経済的負担の軽減を図るため、本年度から妊婦健康診査の助成回数を五回から十四回に拡大します。
高齢者福祉については、本年度を初年度とした高齢社会をめぐる課題に対する基本的な政策目標と施策を明らかにする「第四期高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画」を本年三月までに策定することとしております。
この計画の推進について、関係者と連携しながら積極的に取り組んでまいります。
認知症や知的障がい、精神障がいなどの理由で判断能力の不十分な方を保護及び支援する成年後見制度について、本人に身寄りがいないなどの理由で申し立てができない場合、市が申し立てを行う「成年後見制度利用支援事業」を実施します。
市役所庁舎裏玄関に自動ドアを設置し、高齢者や障がい者をはじめ、すべての市民が利用しやすい施設を目指します。
障がいのある児童生徒への支援については、これまで小中学校に介助員や学習支援補助員を配置しておりますが、今後も支援の一層の充実を図るため、必要に応じて増員するなど適切な配置に努めてまいります。
健康づくりについては、市民一人ひとりが健康づくりの大切さを自覚し、健康づくりに取り組むことができるよう平成十七年度からの十年間を計画期間とした「登別市健康増進計画(健康のぼりべつ21)」を策定し、取り組んでまいりましたが、社会情勢などの変化を踏まえ、必要に応じた見直しを行ってまいります。
また、登別温泉とカルルス温泉がより市民に親しまれ、健康増進につながるように、温泉入浴と森林浴ウオーキング、足湯の体験を組み入れた健康づくりについて推進してまいります。
国民健康保険事業については、医療費において大きな割合を占める生活習慣病を予防するため、特定健康診査、特定保健指導の充実を図ってまいります。
また、独自事業である短期人間ドック、脳ドック、各種がん検診及びインフルエンザ予防のための助成を引き続き実施するとともに、体力づくりを促進するため、水中運動教室等の参加費用の助成を継続します。
国保財政の累積収支は、平成二十年度末で約五億四千八百万円の黒字が見込まれることから、国民健康保険税の医療給付費分の税率を引き下げることといたしました。
介護保険については、「介護給付費準備基金」を取り崩すとともに国から交付される「介護従事者処遇改善臨時特例交付金」を活用し、介護保険料を引き下げることといたしました。
本市の地域福祉の推進役として、市民とともに歩んできた登別市社会福祉協議会が創立五十周年を迎えることから、「登別の地域福祉活動五十周年記念事業」を支援し、地域福祉の一層の充実に努めてまいります。
登別市福祉のまちづくり条例については、今後、福祉団体や関係者をはじめ、多くの皆さんとの話し合いをもち、新たな条例づくりに取り組んでまいります。
第四に、市民が安心して暮らせるまちづくりについてであります。
人々が築き上げてきた財産や尊い人命を奪ってしまう自然災害が全国各地で発生しています。
自然災害からの被害を防ぐには、市民一人ひとりが災害に備えることが重要でありますので、自主防災組織の設立を促しながら、防災マップを活用した防災研修会を開催するとともに、町内会や自主防災組織が参加する大雨や地震災害を想定した実働訓練を実施し、防災体制の強化を図ってまいります。
北海道が進めています市内の土砂災害警戒区域の指定について、防災計画に位置付けるとともに地域住民や女性からの視点を防災計画に反映させるため、防災会議委員に女性を登用してまいります。
学校施設の耐震化については、児童生徒が安全・安心に学校生活をおくることができるよう本年度より優先度の高い施設から耐震診断を実施してまいります。
救急救命については、誰もが救命活動を行えるよう普通救命講習を開催するほか、救命資機材の整備を行うとともに、救命率の向上を図るため高度救命処置資機材等を搭載した高規格救急自動車を更新します。
また、各種イベント開催時等にAED(自動体外式除細動器)を貸し出すとともに、AEDの取扱い方法等についての講習会を開催してまいります。
住宅用火災警報器の普及啓発については、リーフレットを作成し、全世帯に配布するとともに公共施設や大型商業施設等において展示コーナーを設けるなど、その普及啓発に努めてまいります。
消防の広域化については、北海道の推進計画に基づき、西いぶり広域連合による消防広域化に向けた取り組みを進めてまいります。
交通安全対策については、昨年来、市内において交通事故死が多発しており、交通事故防止のため、警察、交通安全協会、連合町内会等の関係団体と密接に連携を取りながら、まちぐるみの交通事故防止に取り組んでまいります。
近年、増加傾向にあります振り込め詐欺及び悪徳商法については、引き続き被害防止のための啓発や被害者への相談に対応してまいります。
特に、地上デジタル放送への移行に伴う悪質商法については、広報紙及び町内会の回覧等を活用し、注意を呼びかけてまいります。
第五に、市民が快適に暮らせる都市基盤の整備についてであります。
住み良いまちづくりを進めるためには、地域の特性を活かし、子どもから高齢者、そして障がい者にやさしい整備が望まれています。
限られた財源を有効に活用し、計画的に都市基盤の整備に努めてまいります。
公園の整備については、市民の憩いの場として、多目的トイレの新設や園路の勾配緩和などのバリアフリー化を行ってまいりました亀田記念公園の整備が本年度で完了します。
自然環境に恵まれた亀田記念公園において、天候に左右されることなく、親子が安全・安心に楽しく過ごすことができる場を設けるため、レストハウスの二階の改修を行い、新たにキッズコーナーを設けるとともに、園内において自然の素材等を活用して親子で作品づくりなどを行う事業として「わくわくドキドキかめだわんパーク」に取り組み、子育て世代の利用の促進を図ってまいります。
道路、公園及び河川敷地等の清掃や草刈などを市民と協働で進める「のぼりべつ・クリーン&フレッシュ事業」については、引き続き進めてまいります。
貴重な動植物が生息する湿原として、環境省の「日本の重要湿地五百」に選定されたキウシト湿原については、保全と利活用を図るため引き続き園路等の整備を行ってまいります。
道路の整備については、現在、進めております国道三十六号登別拡幅改良工事や道道上登別室蘭線(中央通若山地区一期工区)、倶多楽湖公園線(紅葉谷工区)の事業促進と早期完成を国、北海道に対して要望してまいります。
また、道道上登別室蘭線(中央通若山地区二期工区)の早期着手を要望するほか、市道の改良工事等の整備を進めてまいります。
生活の拠点となる住宅については、地域に根ざした良質な住宅供給など、住宅政策の総合的・長期的な基本方針である「登別市住宅マスタープラン」及び「登別市営住宅ストック総合活用計画」の見直しを行います。
また、改正耐震改修促進法に基づき、昭和五十六年以前に建設された建築物の耐震化を図るため、専用住宅、共同住宅、その他建築物の現状を把握し、耐震化に向けた「登別市耐震促進計画」を策定します。
公共下水道事業については、平成二十年度末で約九十二パーセントの普及率となる見込みであります。
本年度の主な整備区域は、登別東町五丁目、登別本町二丁目・三丁目の整備を行い、登別地区の面整備を完了します。
若山浄化センターについては、老朽化が進んでいる汚泥脱水設備の更新を、本年度から二カ年にわたって実施してまいります。
また、し尿及び浄化槽汚でいを若山浄化センターで処理するため、し尿投入施設の建設に着手し、平成二十三年四月の供用開始を目指します。
クリンクルセンターの運営管理については、本年四月より白老町から燃やせるごみ及びペットボトルが搬入されなくなることから、効率的な運営を行い、経費の削減に努めてまいります。
地上デジタル放送への対応については、NHK及び民間放送各局による鷲別中継局、幌別中継局及び登別東微小中継局のデジタル化が平成二十二年に予定されておりますが、放送事業者では実施が困難なことから、国の支援制度等を活用し、中継局のデジタル化に向け、準備を進めてまいります。
第六に、協働のまちづくりの推進についてであります。
まちづくりについては、市民一人ひとりがまちの将来について思いを巡らし、皆が責任をもって協働でまちづくりに取り組むことが何よりも肝要であります。
まちづくりにあたっては、市民と市がまちづくりに関する情報を共有することが重要でありますので、市が保有する情報を積極的に提供してまいります。
また、情報を簡潔でわかりやすく、迅速に伝えるため、昨年八月に室蘭市に開局したコミュニティFMから番組を購入し、市のイベントや行事、各地区のまちづくりの取り組み、市民生活等に役立つ情報発信の拡充に努めてまいります。
市のホームページについても、分かりやすい行政情報や魅力ある観光情報の閲覧がしやすいようホームページの表紙を更新するとともに、ホームページモニター制度を導入し、定期的に改善点等を探るなど、利用者の利便と適切な情報提供に努めてまいります。
各地域の美しい自然や風景などを掘り起こし、魅力の再発見につなげるため、登別市環境保全市民会議と協働で地域の自然や風景などをとりまとめ、広く市民と情報を共有する事業「歩いてみませんか わが家の散歩道」に取り組んでまいります。
協働のまちづくりの推進にあたっては、「登別市まちづくり基本条例」に基づき設置された登別市市民自治推進委員会をはじめ、個人や団体を問わず市民と直接の対話を通して意見集約や協議を重ねてまいりたいと考えています。
また、本市の市民自治の推進役を担う登別市市民自治推進委員会の活動を支援するため、市民を対象とした講演会開催事業などについて支援してまいります。
市民が活き活きと市民活動を展開し、活力あるまちづくりを進めるため、市民活動の拠点となる「(仮称)市民活動センター」の設立に向け、市民活動を行っている各種団体の皆さんとセンターの機能や役割等について十分な協議を進めてまいります。
昨年七月には、この西胆振で「北海道洞爺湖サミット」が開催され、本市においては、環境保全や美化活動などさまざまな市民活動が展開されたところであります。
本年度も、これらの取り組みが一過性のものとなることなく、環境保全、美化活動、難民支援について、市民の皆さんと協働で取り組んでまいりたいと考えています。
本年は、本市出身の言語学者である知里真志保の生誕百年を迎える年にあたります。
知里真志保の偉業をたたえるとともに、その業績を未来に語り継ぐため、北海道ウタリ協会登別支部を中心に「知里真志保生誕百年記念事業」の準備が進められており、アイヌ民族文化や歴史について、理解を深める良い機会と考えますので、これを支援してまいります。
以上、平成二十一年度の市政執行に係る基本的事項について申し上げましたが、未だ活路を見出せない低迷する経済情勢の中、本市を元気で輝くまちとするためには、市民と企業、市がともに手を携え、助け合いと協働の精神のもと、まちづくりに取り組む必要があると考えます。
協働のまちづくりとは、行動に対する対価を決して求めるものではなく、自らの信念に基づき、家族とともに将来にわたって暮らしていきたいと思える魅力あるまちを実現するため、さまざまな人たちと手を携えつくり上げていくものであると考えます。
そして、協働のまちづくりに取り組む人々の活動には、そのひたむきな努力と精神に対して、賞賛と敬意が与えられるべきものであると信じております。
これからのまちづくりは、ギブ・アンド・テイクではなく、まちづくり活動に取り組む人もその活動による恩恵を受ける人も互いに感謝と敬意を払い、心の充足感をもたらす「ギブ・アンド・ギブンの精神」が必要とされると深く感じております。
私は、市民のみなさんと市民生活の向上とまちの発展のため、この「のぼりべつ」が人と人のつながりの中でぬくもりを感じることができ、市民一人ひとりが活き活きと暮らせる「日本一のまち」となるよう、全身全霊をかけ、取り組んでまいります。
議員の皆さん、市民の皆さんのご理解とご協力をお願い申し上げまして、私の市政方針といたします。